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香港の街探索をサポートし、愉しさを倍増させてくれるのが、香港の「乗り物」。バス、フェリー、トラムと種類も豊富。２階建ての路線バスもそのひとつです。
２階建てバスに乗るなら、地元香港人を装って１階の席に座るのもいいですが、やはり観光ならば2階席の、しかも一番前に座って香港の街をパノラマで見るのが最高。ただし、安全上は極めて不安です。（もし追突でもしたら、最前席はひとたまりもありません。運転席よりもキケンです）
学芸員Ｋも、そこに先客がいなければ、そしてある程度の移動距離がある場合は、迷わずここに陣取って、前から迫り来る香港の風景を堪能します。
そんな２階建てバスに乗っていたある日、どこかの映画館に行った帰りだったかで、いつものように最前席に座っていた私は、前方の景色を眺めていました。すると、道路上にある黄色い物体が、視界の片隅を、一瞬かすめるのを感じました。
バスはその物体の上をまたいで通りすぎましたが、学芸員Ｋの頭の中では「あれはナンバープレートかな、いや、多分そうに違いない、いやゼッタイそうだ！」と思いがめぐり、そして「あれを拾うか、否か」に考えは移っていました。
そうこうしているうちに、ひとつめの停留所をやりすごしてしまい、決断は次の停留所で降りるか否かにかかってきました。で、結局降りました。
徒歩で今バスが走ってきた道を逆にたどり、何分か歩くと、大通りの真ん中、横断歩道の脇にその物体は落ちていました。やはりナンバープレートでした。
学芸員Ｋは何食わぬ顔で横断歩道の片側に立ち、信号が青になるのを待ちました。「もし他の人が先に拾ったらどうしよう」と心配しましたが、当然、ほかの通行人はそんなもの無視しています。
信号が青になりました。学芸員Ｋは自然と足早になり、いかにもさっき落っことした俺のナンバーを回収するフリ、を演じてこのナンバープレートを拾ったのでした。
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