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クルマのナンバープレート。香港ではナンバープレートのことを「車牌」といいます。ここでは香港の車牌事情について解説します。
今までなんとなく目に入っていた香港の街を走るクルマ。でも、車牌事情を知ればスパイスがひと味加わって、あなたの香港の街歩きがいっそう楽しくなるかもしれません。
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基本的なポイント
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香港の車のナンバープレートにはこんな特徴があります。
●香港のナンバープレートはクルマにではなくクルマの
所有者に付く
●ナンバーの書体のデザインはかつての宗主国イギリスと
まったく同じ
●ナンバーの基本は「アルファベット２文字と１〜４ケタの数字」
の組み合わせ
●ナンバープレート自体は無法状態！
●ナンバーを売買できる
●必ずしもゾロ目や見た目にカッコイイナンバーだけが高いわけではない
●いわゆる「いいナンバー」のことを香港では「幸運車牌」という
●高いものは日本円で億の値が付く
●幸運車牌を見たければ香港島の中環へGO!!
●で、私見ですが「香港のナンバープレートは世界で一番カッコイイ！」
それではひとつひとつ説明します。一番下には学芸員Ｋがこれまでに遭遇したエピソードを載せたページへのリンクがありますのでお読みください。
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●香港のナンバープレートはクルマにではなくクルマの所有者に付く
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日本のナンバープレートと比較すればわかりやすいと思います。日本ではクルマを買って登録すると、ナンバーが付きます。このナンバーは、ナンバープレートとしてクルマの前後に装着されるわけですが、クルマを廃車にするとそのナンバーは抹消され欠番となります。
たとえば「品川 へ 330 5678」というナンバーで車が登録されてデビューし、のちにその車が廃車になれば二度とこのナンバーが使われることはありません（ちなみに「へ」のつくナンバーは実際には存在しません）。
名義変更をすればクルマの所有者が変わってもナンバーを引き継ぐことができます。しかし、ナンバーはそのクルマの固体のみが持つ車台番号に対して登録されるため、クルマ間ではナンバーを引き継ぐことはできません。つまり日本ではクルマのナンバープレートはクルマに付いているということです。――でも、これって当たり前のことですよね。だってクルマのナンバーですから。
ところが、香港ではナンバープレートは人間に付くのです。その言い方だと人間の認識票みたいで語弊があるなら、言い方を変えれば、香港ではクルマを買い替えようと所有者は同じナンバーをずっと持つことができる、ということです。
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●ナンバーの書体のデザインはかつての宗主国イギリスと同じ
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これは実際にイギリスに行ったときに確認したのですが、香港のナンバープレートのアルファベットと数字の書体は、イギリスのものとウリふたつです。言うまでもなく、つい1997年までは香港はイギリスの植民地だったのですが、それでナンバープレートのデザインも宗主国と同じというわけです。
イギリスと香港では、アルファベットの文字数や並び方が異なりますが、一見しただけではまったく同じものにも見えます。また、プレートの地がフロントは白色、リヤは黄色というのも同じです。ちなみにフランスなども前が白、後ろが黄色です。なお、現在、EU加盟諸国のナンバープレートは、「ユーロプレート」として形式が統一されているようですが、現在のイギリスのユーロプレートの書体が、香港のナンバープレートと同じ書体であるか、学芸員Ｋは現物では確認できていません。
いずれにせよ、香港のイギリスタイプのナンバープレートは、香港が中国に返還された後も変更されることなく今もそのままです。
もし、街の情景のひとつの要素でもあるナンバープレートのデザインが、中国本土と同じものに統一されたら、香港の街の雰囲気は少し変わるかもしれません。
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●ナンバーの基本は「アルファベット２文字と１〜４ケタの数字」の組み合わせ
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| 数字、ひらがな、漢字の混在する複雑な日本のナンバープレートと違って、香港のナンバープレートはいたってシンプル。 |
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香港で最初に登録されたナンバーは「１」。アルファベットは付かず数字だけです。以下、数字だけで「9999」まで行って、あとはアルファベットの |
「AA」「AB」「AC」……「BA」「BB」……「ZZ」と数字１ケタ〜４ケタの組み合わせ。
これでいくと最後の最後は「ZZ9999」となります。しかし実際にこの順番でナンバーが世に出たのかどうか、また「ZZ9999」までナンバーが行き着いたのか学芸員Ｋは知りません。ある個人サイトさんの情報によりますと、アルファベットも最初はひとケタだったとのことですが、学芸員Ｋは「A
1234」のようなシングルのアルファベットのナンバーは見たことはありません。ただし、消防車のナンバープレートのアルファベットはたしかに「F」ひと文字の場合もあります。
さて、このナンバーのシステムでいくと、単純に電卓で計算すれば「１」から「ZZ 9999」まで、676万9323枚のナンバーが存在することになります。香港の全自動車保有台数は1999年の記録では55万8000台です（２輪車含む。香港は２輪車のナンバーも同じ）。そこからいくと、全ナンバーのうち、92％が現在使われていない、あるいは今まで１回も世に出たことがないナンバーということになります。
実際には、学芸員Ｋが街で見かけて記憶に鮮明に残る「XX 1111」というような、アルファベットの最後の方にくる「X」ナンバーがすでに存在することを考えると、アルファベット順には発行していない、または飛び飛びで発行している、あるいは「いいナンバー」だけ先に出してしまったと考えられます。
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と、上の解説を書いたのち、このページの下でも紹介しているナンバー売買業者のサイトであらためてアルファベットを確認してみました。すると、いずれのサイトにおいても、売りに出ているナンバーはアルファベット「AA」から「ＬZ」までは順当にあって、そのあといきなり「XX」になっています。ということは、特別に「XX」ナンバーが飛び石で発行されていたということになります。学芸員Ｋは今までうかつにも気づきませんでした。これに関しては調査の余地ありです。
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と、上の解説を書いたのち、2005年8月4日に改めてナンバー売買業者の各サイトを覗いてみたら、「MA」のナンバーが一斉に売りに出ています。おそらく、今、正式に香港の所轄のナンバー発給の窓口から普通に出されているナンバーが「MA」まで来ているということなのでしょう。
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●ナンバープレート自体は無法状態
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香港の街を走るクルマのナンバープレートをいくつか見ていくと、気づく人もいると思います。ナンバーの書体が一種類ではないのです。
一番多く、基本と思われるのが、上の写真にもあり、このページでイラストで再現した太ゴシック系のものです。
しかし、角のとれた丸ゴシックのものも多く見受けられます。1986年、初めて香港に行ったときにこれらに遭遇したとき、学芸員Ｋはプレート発行の新旧により、ゴシック、丸ゴシックが混在しているのだと思っていました。しかし、そうではないようです。
香港では、どうやら原則としての書体は定められているようですが、プレートを民間で作っているようで──たとえばディーラーがサービスでクルマの購入者に作ってあげるとか──その際、書体がかなりアバウトで決められて作られているようです。学芸員Ｋは明朝の書体のプレートも見ました。
また、文字の並べ方も、とんでもないものもあります。本来なら「JE 1066」と並べるべきところを、最初の2文字を前に付けて「JE10 66」とやっているポルシェを見ました。書体の関係で数字の「１」は、上のヒゲがなくて「l」ですから、アルファベットのアイに見えます。これは最初の「10」を「アイ・オー」と読んで、「JEIO」ということにしているのだと思います。おそらく所有者のニックネームとか会社の略号とか何かなのでしょう。
とにかく、香港のナンバープレートは日本やほかの国では考えられない、アナーキーな状態となっています。 |
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●ナンバーを売買できる。
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日本ではできませんが、香港ではナンバーを売買できます。もちろんナンバープレートではなくナンバー自体の売買です。
香港ではナンバーの売買を仲介する業者やナンバーを買い取る業者があり、新聞を見ると広告が載っています。そこにはいくつも「いいナンバー」らしきものが並んでいます。また、ときには政府によるオークションも行われます。
香港のナンバープレートはアルファベット２文字と数字４ケタまでの組み合わせというシンプルな文字列であり、さらにいったん得たナンバーを同じ人間が永年にわたって所有できるというシステムのため、「いいナンバー」はまず間違いなく大昔に人の手に渡っています。したがって「いいナンバー」を手に入れるには、持っている人や業者から買うことになるわけです。
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●必ずしもゾロ目やカッコイイナンバーだけが高いわけではない
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| 日本では1998年に希望ナンバー制度が導入され――これまで一部で行われてきた非公式なやり方から変わって――公の制度として、イギリスやアメリカなどと |
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同じように自分の好きなナンバーを付けることができるようになりました。日本での人気のナンバーは「１」などのヒトケタや「7777」「8888」などのゾロ目ですが、これらは希望者が多いために抽選となっています。
では、香港で人気のある「いいナンバー」とはどんな数字なのか。もちろん「１」やゾロ目も高値で取り引きされますが、そこは中華系の香港。数字の発音を文字に置き換えたエンギかつぎをしたりします。
日本でも、たとえば仲の良い夫婦が自分たちのクルマに「いい夫婦」の意味を当てた「1122」というナンバーをつけたりしている例があるようです（ちなみに「1122」はその意味だけではなく数字ワン・ツーの配列のカッコよさからも好まれているのでしょう）。でも、香港はそんな個人的な当て字解釈のレベルではないのです。伝統的な、数字発音の漢字置き換えというエンギかつぎの文化があるのです。
代表的なところでは「3288」。一見、配列が美しいわけでもなく、日本人なら見過ごしてしまいます。しかし、この数字には大きな意味があります。
「3288」は「さん・いー・ばっ・ばっ」と読みます。この読み方はその発音から「生意發發」の字に置き換えられ、これは「商売繁盛」という意味になります。この「3288」→「商売繁盛」は香港ではごく一般的に知られた有名な当て字です。会社の社長サンやレストランのオーナーさんにどうぞ、というわけです。
ただし、ここまでドンピシャでキマったナンバーだと、その市場価格はひとケタ高くなります。なかでも特にアルファベットなしの｢3288」は市場に出れば超高額ナンバーとなるはずです。
ちなみに、右上のイメージイラストは、「BB 3288」というエンギ物のナンバーです。ちょっと描いてみました。このナンバーは超プレミア幸運車牌です。 アルファベットの「BB」は数字の「88」とも受け取れます。「8」は無限大をあらわす「∞」にも通じます。つまり「Ｂ」→「8」→「∞」で、「BB 3288」は「永遠無限に商売繁盛！」ということになります。もし香港の街角で見かけたらご一報ください。
おそらく、「BB 3288」くらいの大御所ナンバーだと、現在どこの誰がこのナンバーを所有しているのか、そんなことは香港の巷では知れわたっていることなのかもしれません。
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●いいナンバーのことを香港では「幸運車牌」という
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香港では「いいナンバー」のことを「幸運車牌（Lucky Number）」と言います。グッドナンバーとか、クールナンバーというのではなくて、ラッキーナンバー。この呼び名に、香港人が文字による縁起かつぎを大切にしていることがよく表れています。
日本では良いナンバーは抽選です。したがって言ってみれば、日本では 「いいナンバーが抽選に当たって手に入った時点で 『幸運』！」、というわけですが、一方香港では、「幸運車牌を手に入れてから 『幸運』 が始まる」、という寸法です。
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●高いものは日本円で億の値が付く
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ということで、すでに述べたことも含めて、幸運車牌はその背景として次のような状況に置かれています。
１．香港人はエンギをかつぐのが好きです。エンギかつぎにお金をかけます。
２．香港の「幸運車牌」で本当にイイものは数が限られています。
３．香港にはアメリカの雑誌「フォーチュン」の「世界の大富豪」に出てくる面々も含めて超大
金持ち、成金がたくさんいます。
……という背景があれば、自然な経済原理として、イイ幸運車牌は高い価格で取り引きされます。中にはとんでもない価格で売買されることもあります。
これまでの売買で、最高の値で落札されたナンバーは、アルファベットなしのひとケタナンバー「 ９ 」です。このナンバーは1300万香港ドル（１香港ドル＝15円で換算すると、約２億円）の値が付きました。
また、香港返還前には「HK 1997」というナンバーが話題となりました。もちろん「HK」は香港を、「1997」は香港返還の年を意味します。このナンバーに一時は480万香港ドル（約6900万円）の値が付いたということです。あの「HK 1997」ナンバーは今どうなっているのか。街で見かけたら、それこそラッキーです。
あと、実際には通常のナンバー売買の市場に出ることはほとんどないと思いますが、上に挙げたようなアルファベットなしのヒトケタのナンバーやアルファベットなしの先ほどの「3288」などは、日本円で億単位のプレミアが付くと思います。これらのナンバーを手に入れたいなら、やはり政府主催のオークションが狙い目です。
ということで、たとえば街で最新型の超高級メルセデスやロールスロイスやベントレーを見かけたとしても、ナンバーがフツーの数字だったら、オーナーはそこまでお金がまわらなかったのかもしれません。まあ、ナンバーに興味のないオーナーも多いとは思いますけど……。逆にすごく古いポンコツ車でもそのナンバーが「BB 3288」だったりしたら、運転しているのは大富豪かもしれません――クルマは事業を始めたときに買った当時の大衆車のまま、初心を忘れることのないように買い替えずに時をきざみ、成功するにしたがってナンバーだけ出世させて買い替えた。そしてついには一大コンツェルンを築いて「BB 3288」を手に入れた。しかしそのナンバーは苦労をともにしてきたポンコツの愛車に付けている──とか。まあ、そんな例はあまりないとは思いますけど……。
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●幸運車牌を見たければ香港島の中環へGO!!
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さて、幸運車牌、あるいはアルファベットなしの数字だけのナンバーなど、ステータスの高いナンバーを付けたクルマを見たければ格好のエリアがあります。それは香港島の中環（セントラル）です。
ここは言わずとしれた香港の政治･経済の中心地。本当にここにはアルファベットなしのナンバーや、ひと目で高そうな数字のナンバーがゴロゴロしています。
わざわざナンバーを見に行く人はいないと思いますので、ショッピングなどで中環へ行ったついでに、あなたの横を通り過ぎていくメルセデス･ベンツや路肩に停まっているロールス･ロイスのナンバーを見てみてください。
きっと、「なるほど、これが幸運車牌か」と言えるものをたくさん見かけると思います。
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●で、私見ですが「香港のナンバープレートは世界で一番カッコイイ！」
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| 均整のとれた太目の書体。同じ書体のイギリスのナンバープレートよりもアルファベットと数字の配列がシンプル。欧米はじめ世界のナンバープレートを、テレビ、映画、雑誌で見たり、ときには現地で現物に触れてきましたが、香港のナンバープレートは世界で一番カッコイイと思います。香港が好きだからというひいき目からではなく、客観的に見てそう思えるのです。 |
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どうですか？ 香港のナンバープレートはすごく面白いとは思いませんか？ どうでもいいといえば、どうでもいいことなんですが、こんなことも香港の街歩きのスパイスになると学芸員Ｋは思います。皆さん、いかがでしょうか。
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 学芸員Ｋが香港のナンバープレートで遭遇した
２、３のエピソード
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参考：●YAHOO!香港のオークションには車のナンバ
ー出品のカテゴリが設けられています。
〔YAHOO!香港拍賣號碼〕
●ナンバー売買の民間業者のサイトです。
〔幸運車牌中心〕
〔優質幸運車牌中心〕
〔118香港専業車牌有限公司〕
覗いてみましたか？ これらのサイトを見てわかるとおり、決定的なスゴいナンバーというのはなかなか売買市場に出てきません。スゴイ数字のヤツは、おそらく政府主催の幸運車牌のオークションや、香港上流社会での金持ち同士のコネや、香港人特有の人的ネットワークで内々に取り引きされていると思われます。確実にそうです。そうしてそんなナンバーを手に入れた人は、それこそ、幸運というわけです。
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