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【ふぁいろっ・へいゆん】
<リバティ>
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●エリア：九龍・佐敦
●所在地：佐敦道26E
●座席数：1階 不明／2階 不明 計1268席
●変遷：2000年頃閉館、現在は「寶輝閣（LIBERTY MANSION）」
●写真中の映画の看板
上映中：『龍拳虎威(ROCKY4)』
監督／主演＝シルベスター･スタローン
次回上映：『非洲之旅(Out of Africa)』
監督＝シドニー・ポラック
主演＝メリル・ストリープ／ロバート･レッドフォード
 〔快樂戲院 看板拡大〕 |
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嘉禾戲院の向かいにあった香港映画と洋画の混成上映館
今思えば当時からすでにレトロな趣きの外観
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嘉禾戲院に通っていた学芸員Ｋは、その斜め向かいにあったことからこの快樂戲院でも自然と足が向かい何度か映画を観ました。この映画館は洋画上映館なのですが、洋画、香港映画の混成上映館だったと思います。学芸員Ｋはここでサモハン・キンポーの『霹靂大喇叭』を深夜の先行ロードショーで観ました。この映画は德寶電影の作品ですが、この快樂戲院が德寶院線（德寶チェーン）だったのかはわかりません。
1986年3月16日深夜11時30分。映画『霹靂大喇叭』は、満員御礼で文字通りの札止め。学芸員Ｋはやっとのことでスクリーンから３列目ほどの席を手に入れて座りました。映画が始まると爆笑、爆笑、大爆笑。場内には笑いとともに掛け声や声援、ヤジが飛び交い、学芸員Ｋは感激で泣きそうでした。
この快樂戲院では、香港映画だけではなく写真の『龍拳虎威』、すなわち「ロッキー４」も観ました。それも３度。なぜ３度も見たかといえば、観客の反応に感激したからでした。
映画のクライマックス。主人公ロッキーはソ連のボクサー、イワン・ドラゴとリングで死闘を繰り広げます。当然、映画ですから最初はロッキーが劣勢。しかしロッキーの小さな一撃がついにドラゴの顔に命中し、そこから反撃に出ます。
その一撃で、それまで静かだった劇場に拍手が自然に起こりました。それからは劇中の試合の観客と同様に、映画館内の観客もスクリーンのロッキーに声援を送り、ロッキーが勝利を遂げたときに拍手が起こりました。
学芸員Ｋは観客の反応に感激してしまい、結局３度も観てしまったのでした。付け加えておきますと、香港の映画館は毎回全席指定の入れ替え制です。つまり学芸員Ｋは、３回チケットを買って入場して３度『ロッキー４』を観たのです。
この映画館は、当時の他の映画館と同様に、入場口から中に入ると、廊下やロビーはなくいきなり座席のある場内なのですが、その場内と外を隔てるものがなんとカーテンのみでドアがありませんでした。したがって、映画上映の最中も佐敦道の雑踏や走る車の音がほのかに聞こえてくるのでした。
さて、ある日。これは１回目の香港だったか、２回目の香港だったか、朝10:30の回の上映を観ようと快樂戲院に行きました。10:30には旧作を上映するのが香港の映画館です。その日、待合フロアには多くの男性客がいました。旧作上映の場合、館内にはポスターも貼られず、作品名だけが壁にかかっていることが多いのですが、学芸員Ｋは上映作品が何かよく確かめもせず中に入りました。
やがて場内が暗くなり、スクリーンに映し出されたのは洋画のポルノ。そうかあ、だから男ばっかりだったのか、と合点がいったのですが、特に出る理由もなく……最後まで観ました。大変つまらない内容でした。それにしても「快楽」という名の映画館でポルノ映画、とはちょっと出来過ぎの感じも……。中国語の快楽という言葉は、日本語とは少しニュアンスが違いますけど。
この映画館の様子を今あらためて写真で見直すと、他の映画館と比較しても当時すでにレトロな雰囲気を漂わせていたことがわかります。日本の映画関係者が映画館のことをよく「小屋」と言ったりしますが、そんな呼び方がピッタリくるようなたたずまいです。快樂戲院も今はなく、寂しい限りです。
後の香港旅行での学芸員Ｋの滞在日記を見返していたら、
──「快樂戲院の壁面に『英雄本色２』（男たちの挽歌２）の看板がかかっているのを日本のニュース番組のVTRで見た」──と、なぜか香港の滞在日記なのに日本のテレビのことが記してありました。
いずれにせよこの『英雄本色２』の上映で、きっと、この座席数1268の場内は満員御礼でにぎわっていたことでしょう。
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