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【ふぇいちょい・だーいへいゆん】
【みんちゅう・だーいへいゆん】
<ジェイド><パール>

●エリア：香港・銅鑼灣
●所在地：百德新街36-22 珠白大廈
●座席数：翡翠 1階 1031席／2階 449席　計1480席
　　　　　　　明珠 1階 949席／2階 374席　計1323席
●変遷：1990年代に２階席のみ残して規模縮小
　　　　　現在は「銅鑼灣MCL JP」の名で１館存続
●写真中の映画の看板
　翡翠・上映中：『聽不到的説話』
　　　　　　　　　監督＝姜大衛　主演＝劉青雲
　明珠・上映中：『喪屍出籠(Day of the Dead)』
　　　　　　　　　　監督＝ジョージ・Ａ・ロメロ
　　　　　　　　　　主演＝ロリ・カーディル

〔翡翠＆明珠看板拡大〕　

〔翡翠＆明珠戲院 more〕

かつての盟主ショウ・ブラザースが直営する大劇場
『キル・ビル』冒頭で「SB」マークが流れて再脚光を浴びる

　アメリカ映画「キル・ビル」（監督：クエンティン・タランティーノ）の冒頭、いきなり何の脈絡もなく、ワーナーブラザースの「WB」マークに似た「SB」マークが、20世紀FOXのそれに酷似したファンファーレととも画面に登場します。

　これは香港映画オタクでもあるタランティーノが、マニア丸出しの感覚でやった、映画本編とはまったく関係のない一種の余興です。実はこの「SB」マークは、香港映画ファンなら知る人ぞ知る大映画会社ショウ・ブラザースの、その全盛時代の作品の冒頭に現われた本物のクレジットタイトルです。

　映画館「翡翠大戲院」と「明珠大戲院」は、その「SB」のマークが掲げられていることからもわかるように、ショウ・ブラザース（邵氏兄弟公司）の直営映画館です。

　写真の真ん中あたり、館名「JADE」の右に「D」の文字の看板がありますが、これは86年当時にメジャーの仲間入りをしていた新興映画会社、D&B（ディクソン＆ブーン／德寶電影有限公司）の看板です。翡翠大戲院はD&B系の作品をかける映画館―― 香港での呼び方でいうところの「德寶院線」（德寶チェーン）――の映画館だったと思われます。

　まさにこの写真を撮った同じ年の1986年、ショウ・ブラザースは映画制作から撤退し、映画配給のみをおこなうようになりました。この写真を撮影した86年3月上旬の時点ですでに映画製作から手を引いていたのかは不明ですが、いずれにせよそんな状況でショウ・ブラザースはD&Bの作品を自社の直営館でかけるようになったのだと思います。（ちなみにショウ・ブラザースの総帥、ランラン・ショウは香港の最大メジャーテレビ局、TVBも経営しています）

　撮影した1986年に、学芸員Ｋは翡翠大戲院で看板にもある『聽不到的説話』という作品を観ました。この翡翠大戲院も大変大きな劇場だったと記憶しています。フロアの形が少々いびつで、そこに少しでもたくさんの席を入れようとしたのか、後方の席がやや不規則な形でならんでいる箇所がありました。

　この２つの映画館の入っているビルは、いわゆる雑居ビルというか、複合ビルです。下が店舗と映画館、そして上はアパートとなっています。このようなビルは香港では珍しいことではありません。当時、このビルをはじめて見たときは、「映画を観たいときはアパートの部屋からエレベーターで降りて行けばいいのだから、こんなアパートに住みたいものだ」と、本気で思いました。

　一方の明珠大戲院ものちに入った記憶がありますが、作品は思い出せません。マギー･チャンが出ていました。この２つの大劇場は、のちに場内が上下に分割され、下はショッピングフロアになってしまいました。分割による映画館の規模縮小というやり方は、香港の大映画館がたどった、もっとも典型的なパターンです。

　現在の映画館は「銅鑼灣MCL JP」です。MCLはシネコンのチェーンです。この映画館もそのチェーンに組み込まれてしまいました。この館名の最後の「JP」は、「JADE（翡翠）」＆「PEARL（明珠）」の頭文字だと思われます。

　かつて香港を代表したショウ･ブラザースの大映画館、翡翠大戲院と明珠大戲院（合計座席数2803席！）は、現在では他の映画館と同様にささやかな座席数の映画館として、館名の最後に付いた頭文字たった2文字のみに、当時の名残をとどめているのです。

〔看板拡大〕　

〔翡翠＆明珠 more〕

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かつての盟主 ショウ・ブラザースが直営する大劇場 『キル・ビル』冒頭で「SB」マークが流れて再脚光を浴びる

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