嘉禾戲院 Golden Harvest Theatre

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【かーうぉー・へいゆん】
<ゴールデンハーベスト>

●エリア：九龍・油麻地
●所在地：佐敦道23-29號
●座席数：1階 814席／2階 470席　計1284席
●変遷：1990年頃に新寶戲院となり、2000年頃閉館
　　　　　現在はショッピング＆オフィスビル「新寶廣場」
●写真撮影時の映画の看板
　上映中：『奇縁』(WHITCH FROM NEPAL)
　　　　　　　監督＝程小東　主演＝周潤發
次回上映：『壞女孩』(Why,Why,Tell Me Why?)
　　　　　　　監督＝蕭嘉榮
　　　　　　　主演＝梅艶芳／陳友／上山安娜

〔嘉禾戲院看板拡大〕　

〔嘉禾戲院 more〕

〔嘉禾戲院 20年後の姿〕←ただいま修正工事中

　1986年当時の香港の大映画館の代表格のひとつがこの嘉禾戲院です。中文名は「嘉禾」、英文名は「Golden Harvest（ゴールデンハーベスト）」です。

　ゴールデンハーベストは1970年に設立され、ブルース･リーや、ジャッキー･チェンの作品を世に送り、香港映画黄金時代を象徴した映画製作・配給会社です。この映画館は、ずばりゴールデンハーベストの名を冠した、同社の直営館です。

　学芸員Ｋの香港通いの初期において、「嘉禾戲院」で「嘉禾作品を観る」ことは、いわば「聖地メッカ巡礼」のようなものなのでした。ニューヨークのブロードウェーの劇場でブロードウェーミュージカルを観る、あるいは日本で言えば、宝塚市の宝塚大劇場で宝塚歌劇を、はたまた大阪千日前のなんばグランド花月で吉本新喜劇を観る、というような、たとえばそんな感じです。

　学芸員Ｋが香港で初めて入った映画館がこの嘉禾戲院です。そして初めて観た作品は、写真の看板に写っている嘉禾作品『奇縁』。当時まだ日本ではまったく無名だったチョウ・ユンファが主演するミステリー映画です。

　初めて入った香港の映画館。しかも嘉禾戲院。照明が落とされた場内――。

　映画本編の冒頭。「ダン、ダン、ダン、ダン…！」とゴールデンハーベストのクレジットタイトル。大スクリーンに映った「嘉禾 GOLDEN HARVEST」、そして真四角の「Ｇ」のロゴを見たときは感動で鳥肌が立ちました。

　MTR佐敦駅からほど近いこの劇場は、学芸員Ｋが最初の香港で泊まったホテルから幸運にも歩いて数分と近かったこともあり頻繁に通いました。この映画館のためにそれから後もしばらくは同じホテル（フォーチュナ･ホテル（富都酒店）・90年代半ばに閉鎖）を定宿にしていたくらいです。
　
　外観のデザインは当時の香港の映画館の中では最も個性的だったと思います。万博のパビリオンといったたたずまい。壁面に「嘉禾戲院　Golden Harvest」の館名が大きく掲げられています。館名の「嘉禾」のロゴ書体は、嘉禾作品の映画のクレジットタイトルの書体そのまんま。だから日本の香港映画ファンにとっても、大変なじみのあるロゴです。学芸員Ｋは当時、嘉禾戲院の間近に立ってこの館名のロゴを見上げるたびに、「俺は今、香港にいるのだ」という実感がふつふつと沸いて、胸を熱くしていました。

　この映画館は座席フロアの傾斜が急なことが特徴でした。サウンドは当時の香港の映画館としては並レベルだったと記憶していますが、日本の映画館に比べたらその音質はすさまじく悪いものでした。でも、あばたもエクボということでしょうか。異邦人の学芸員Ｋにとっては、この割れたような音がまた味わい深かった。だいたい、当時の香港映画はジャッキー・チェン主演のような大作でも音声はドルビーではなく、驚くことにステレオでさえもなかったのですから、音質なんて気にしてられません。

　映画本編の始まる前には、日本の映画館と同じようにコマーシャルが流れます。スライドでラブホテルのCMが映し出されて女性の声でガンガン宣伝文句が流れて、そんなところはちょっと場末な感じもありました。でも、佐敦道に面して圧倒的に存在感のあった立派な映画館でした。

〔看板拡大〕　

〔嘉禾戲院 more〕　

〔20年後の姿〕

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